◆物語のあらすじ◆

 

子宝に恵まれなかった京都北白川の公家・吉田少将これふさ、美濃国野上長者の一人娘、花御膳の夫婦は日吉宮に祈願して梅若丸を授った。

梅若丸、五歳の時に父を喪い、七歳になり都の東北にある比叡山延暦寺月林寺に預けられ、彼ほどの稚児はいないと賞賛をうける。

これを妬んだのが松若丸という、やはり評判の稚児のいる東門院の山法師たちである。

彼らに襲われた梅若丸は、山中に迷ったのち、琵琶湖のほとりで人さらいの信夫藤太に連れ去られ、東国への苦しい旅を続けた。

しかし途中、隅田川の岸まで来て、ついに病に倒れ、里人たちの親切な介抱のかいもなく、自分の身の上を語り、生涯を閉じる。

貞元元年(976)三月十五日のことで、梅若丸はわずか十二歳であった。

その折、たまたま来あわせていた旅の僧、忠円阿闍梨が里人と墓をつくって柳を植えたという。

その翌年、我が子の行方を探し求めて、狂女に身をやっした母親が隅田川に到り、渡し守から梅若丸の死を知らされたのは、我が子、梅若丸の一周忌のことであった。

その夜、悲しみにくれる母も加わって念仏を唱える母の目にありありと亡き我が子の姿が現れた。

しかし、それも束の間、再びその姿は消え去っていった。

忠円阿闍梨がこの話を聞き、梅若丸を弔う堂を築き、母はそこに住みつきましたが、ある日、対岸の鏡が池に身を投げて我が子の後を追う。

すると不思議なことに亀がその遺体を乗せて浮かびあがってきました。そこで忠円阿闍梨が墓を建て、妙亀大明神として祀り、一方、梅若丸は山王権現として生まれ変わった。